シュリーマンは、トロヤの遺跡を発見した人である。幼い頃からトロヤに魅せられ、それを発掘することを夢見た彼は、貧しい青年時代も情熱を秘め懸命に働き、40代で大実業家に。一生働かずにすむだけの資産を手に入れた彼は、遺跡発掘に注ぎ込み、ついに実在しないと言われた遺跡を掘り起こした。要は「お前も好きなことをして生活したいのであれば、経済的基盤を築け」ということだったのだろう。しかし、当時は真剣に考えていなかった。そして今の生活はシュリーマンとは程遠い。原稿一本書いていくらの日々である。しかも、仕事を発注するかしないかは出版社であり、いわば生殺与奪の権限を握られている。ライター仲間と酒を飲んでは、「俺たち、完全にラットレースにハマッテイルよね」などと自嘲することしばしばである。
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◆お前はシュリーマンになれ
私の最大の趣味は旅である。大学生の頃は長期の休みになる度にバックを背負い、アジアを中心に多くの国々をヒッピーを気取り歩き回っていた。大学卒業後も海外で生活することに対する憧れは強く、実際、タイやインドで日本企業で現地社員として働いた経験もある。ところがここ数年は、長期の休暇など縁のない生活をしている。ライターという職業柄、休暇などもちろんなく、愛する妻と可愛い息子を持ち、一応、常識人を自認する私が、そんな無責任なことはできない。かくして日々、ハードな締め切りに追われつつ、いつの日か働かなくても食える身分になり、思う存分世界中を旅して回ることを夢想するのである。そんな時、私が思い出すのが、学生時代、父に言われた言葉だ。お前は将来、どう生きたいんだと聞かれ、「できれば生涯、いつでも好きなときに旅に行ける生活がしたい、但し、貧乏は嫌だ」と、今にしては恥ずかしすぎる。あまりにも世間を知らないナメタことを言う私に、父は言った。「じゃあ、お前はシュリーマンになれ」
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◆仕組みとは
「・・・・ああ、仕組みね、俺の周りの若手社長さんも、最近みんな口を揃えて、やっぱり仕組みを作らないとダメでしょう、仕組みを作ったヤツが勝つよ、と言っているよ。じゃあ仕組みとはいったい何を指すのかと言われると、結構曖昧なんだけど。なんていうか「システム」みたいなものかな。まだ宵の口の時間、渋谷の飲み屋で久々に会った15年来の友人・T氏は、タバコをくわえながら軽い口調でこう言った。「最近、仕事はどう?」と聞かれて、「なんか仕組みという言葉を使う人にやたらと会うんだよね」と、答えたことに対する彼の反応である。T氏自身、古着バイヤーとして業界では知られ、海外に会社を持つやり手起業家、周囲にも若くして自分のビジネスを所有している人は多い。そんな彼らの間でも、仕組みという言葉が、ある種のキーワードとして囁かれ、そして静かにゆっくりと浸透しつつあるという。「これはいったい、何なんだ?」。まさにこの瞬間が、仕組みを追う我々の旅の起点となった。
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取材を重ねて感じたのは、やはり「仕組み」はおいしいということだ。日々、くたくたになるまで働いて収入を得ている多くの人々には夢のような話だ。しかし、動機が単に「楽をしてお金を儲けたい」ということなら、あなた独自の仕組みつくりに、ほぼ間違いなく失敗するだろう。ここに登場する仕組みの所有者たちは、例外なくハードワーカーであり、仕組み作りに数え切れないほどのトライ&エラーを繰り返しているケースがほとんどだった。「棚からボタモチ」は決して落ちてこないのだ。最後に、誤解して欲しくないが、「汗水を流し、コツコツと働くことを否定しているわけではない」ということだ。
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